2017年03月27日

水銀灯の色かぶり

卒園式の撮影にて

この時期は卒業式や卒園式の撮影の依頼が増えるわけですが、あまり引き受けると日にちがかぶった時にダブルブッキングにもなりかねませんので、積極的には受けておりません。フリーカメラマンの宿命です。本日撮影に伺った保育園は、僕がまだかけ出しのカメラマン時代に何度もモデルを頼んでいた子からの依頼だったので、喜んで引き受けました。

聞くところによると地元の写真館さんもちゃんといるけど証書受け取りと集合写真しか撮らないそうで、わざわざスナップ用のカメラマンを毎年探しているのだそうです。

会場に行ってみて、なかなかカメラマンが見つからない理由が良く分かりました。ここの園の式はプロジェクターに思い出の写真を投影しながら園児たちが、一生懸命覚えたセリフを発表するという趣向となっています。そのため黒幕で外光を完全にシャットアウト。会場内は昭和から使用していると思われるレトロな水銀灯で照らされています。水銀灯は緑がかった青白い光を放ちます。人間の目は自動的にホワイトバランスをとりますので一見普通の色に思えますが、写真に撮ると上の写真のような強烈な緑かぶりを起こしています。しかもとても暗い。

点灯してから完全に発光するまで数分かかり、その時間もタマによってまちまち。プロジェクターの投影が終わって水銀灯を点灯してもなかなか元の明るさに戻ってくれません。

この悪条件ではなかなかキレイな写真を残してあげるのは難しいと思います。ストロボの発光はプロジェクターの映像の邪魔になるのでなるべく控えて欲しいとの要望もあり、悪条件が重なります。

色に関しては後処理でなんとかすることに。

少しマゼンタを足すと緑かぶりが軽減されます。写真右端の白とびしている部分が自然光ですがほんのりマゼンタがかっているのが確認できます。

悪条件でも引き受けてしまったからには言い訳はできませんので、24-70と70-200の2本のレンズを使い分けてストロボ発光も慎重になりながら、感度と絞りを撮りたい絵に合わせて設定を変えながら、頭フル回転で撮影しました。

いつもなら園児の歌を聞いて一緒に感動したり魚眼レンズで遊んでみたり構図を工夫してみたりしながら楽しんで撮影しているのですが、今日は久しぶりに汗をかきながら必死に撮影しました。良い写真もたくさん撮れたのではないかと達成感を味わっています。

スナップ撮影も侮れない

現時点で、ブライダルや学校行事のスナップカメラマンの中にフィルム時代からやっているカメラマンはどのくらいいるのでしょうか?デジタルカメラの普及以降急速にその手のカメラマンが増加していることを考えると、フィルム時代からやっているカメラマンは少ないのではないかと思えてしまいます。カメラマンを探すとき、SNSやホームページに投稿されている写真でそのカメラマンの腕を判断するのは非常に危険です。WEB上の写真なんて何とでもできますからね。ブライダルでも学校行事でもカメラマンの力量不足のために起こるトラブルの話は最近よく聞きます。スナップ撮影というと一眼レフにクリップストロボがあればそこそこ撮れるのではと思ってしまいますが、条件が悪いときは非常に難しい撮影になります。そんなときはフィルムカメラ時代に体で覚えた『感』が一番頼りになるものです。悪条件下での撮影でもそこそこの結果を出せないとトラブルになります。ギャラをいただけないどころか賠償請求されてしまうかもしれません。

いつも同じような撮影ばかりしていると突然の悪条件に対処しきれなくなってしまいかねないので、たまにはこういう緊張感がある撮影もしないといけないですね。